理想の歌い方を妄想しよう
VOCALOIDの調整方法を調べると
・しゃくらせよう!
・ビブラートを効かせよう!
といったことをよく見かけると思います。
でも、その前に一番大事なことは
VOCALOIDにどう歌って欲しいか、自分なりの理想があること
だと思います。
例えば、
・どれぐらいの長さ、深さをしゃくらせるか
・上からのしゃくり、下からのしゃくり、どっちが好きか
・どれぐらいの長さ、深さでビブラートさせるか
ここに正解はないです。
ただ、自分なりの理想もなく、ただしゃくらせても、
歌としての味は出ないのではないかと思います。
では、どうやって理想の歌い方を見つけ、VOCALOIDの調整方法を理解するか、
ピッチの動きに関して、説明していきます。
ただ、初心者向けの内容ではないです・・・。
VOCALOIDで歌モノを作ることとDAWに慣れてきた方向けの内容になります。
ステップ1: 好きな歌手を探す
まずは、好きな歌手を探しましょう。
上手とか下手とか、そういうことは気にしなくて良いと思います。
この後のステップがメンドクサイこともあるので、まずは純粋に好きな歌手が良いと思います。
余談ですが、私はヒャダイン(&ヒャダル子)さんを解析しました。
メジャーデビューされる前からファン(マヒャド勅使河原を知っています?)でしたし、
愛用のVOCALOID、鏡音リンレンの男女ペアとも相性が良かったからです。
ステップ2: 好きな歌手のボーカルのみのデータを作る
次に、好きな歌手のボーカルのみのデータを作ります。
いくつか方法がありますが、2つ紹介します。
(他にも方法はいっぱいありますので、必要に応じて探してください)
- Windowsの無料アプリ「歌声りっぷ」
- 「iZotope RX」の「Music Rebalance」機能を使う
歌声リップの場合
「歌声りっぷ」は、ボーカル入りの音声データと、カラオケの音声データの差分から
ボーカルデータだけを抜き出す、Windowsの無料アプリです。
「入力WAVEファイル(オリジナル)」にボーカル入りの音声データ、
「入力WAVEファイル(カラオケ)」にカラオケの音声データを読み込み、
「作成開始」をクリックするだけで、出来上がります。
「設定」で、精度を調整することもできます。
iZotope RXのMusic Rebalance機能の場合
「iZotope RX」の「Music Rebalance」は、音声データの中の
「Vocal」「Bass」「Percussion」「Other」を個別に音量調整できる機能です。
今回は「Vocal」以外の音量を-inf.にして無くしてしまい、
「Render」をクリックして、ボーカルデータだけのデータにします。
それぞれのメリットとデメリットは下記です。
歌声りっぷ | iZotope RXのMusic Rebalance機能 | |
メリット | ・ソフトは無料 ・抽出は早い | ・ボーカルありデータさえあれば良い ・Windows、Mac両方対応 |
デメリット | ・ボーカルありとなしの両方のデータが必要 (データの用意に2つ分のお金がかかる) ・WIndowsのみ対応 (Mac上で動かす方法もあります) | ・iZotope RXが高い RX8 standard版で定価46090円 (ただし、サイトによって価格はマチマチ) RX8ではElements版は未対応。注意! ・抽出は遅い |
リンク
歌声りっぷ (窓の杜)
iZotope RX8 (公式サイト)
ステップ3: ボーカルのピッチの動きを解析する
抜き出したボーカルデータより、ピッチの動き方を解析します。
CubaseのVariAudio機能や、Melodyneを使います。
(他のDAWやソフトのピッチ解析については、それぞれで調べてください)
例1: Cubase付属のVariAudioで解析する場合
1. Cubaseのオーディオトラックに読み込んだデータを選択する
2. 下ゾーンに表示されるオーディオ画面を選択する
3. 左ゾーンの「VariAudioを編集」横の三角マークをクリックすると、解析される
例2: Melodyneで解析する場合
1. Melodyn画面内の「Transfer」をクリックし、赤丸状態にする
2. 楽曲を再生する(再生した分だけが解析対象になる)
3. 停止し、解析が始まる
解析アルゴリズムが「ポリフォニック」系になったときは、
メニューのアルゴリズムから「メロディック」を選択する
ノートに追随して、上下に揺れている線が、ピッチの動きです。
ドの音を歌っていたとしても、ずっとドの高さで歌っていることはなく、
かなり揺れていることが分かると思います。
このピッチの動き方が、歌手ごとに違い、それが味で、歌い方の理想となるところの1つです。
ステップ4: 解析データをMIDI化する
ボーカルの解析データをそのままVOCALOID Editorに写すのは、さすがに大変です。
まずは解析データをMIDIデータにします。
Cubase付属のVariAudioとMelodyn、それぞれの方法は下記です。
(個人的にはMelodynの方が、MIDI化の精度は高いと感じています)
Cubase付属のVariAudioの場合
1. 「VariAudioを編集」横の三角マークをクリックし、編集可能状態にしておく
2. 「機能」の横にあるプルダウンより「MIDIデータの抽出」をクリックする
3. 表示される「MIDIデータの抽出」ダイアログで「OK」をクリックする
Melodynの場合
1. メニュー「設定」の「MIDIとして保存」をクリックする
MIDIデータの出力が出来たら、VOCALOID EditorにMIDIデータを読み込みます。
ステップ5: VOCALOID Editorでピッチの動きを模写してみよう
それではピッチをVOCALOID Editorに模写していきます。
目的は、歌手ごとのピッチの動き方のクセを知ることです。
大変ですが、頑張ってやってみましょう!
PBS設定
まずは、下準備でVOCALOID Editorの「PBS」パラメータを調整します。
PBSとは、ピッチベンドセンシティビティーとのことで、ピッチの最大幅を設定できます。
PBSの初期値は2です。
この場合、半音2つ分までピッチの調整ができます。
さて、今回の解析結果を見ると、ピッチの線が半音2つ分以上動いている箇所があります。
そうなるど、PBS値2では調整できません。
今回は、PBS値を4にし、半音4つ分までピッチの調整ができるようにしておきます。
PBS値は、ピッチの動き幅を見て、適宜調整してください。
PITの書き込み
後は、VOCALOID Editorの「PIT」を開き、ピッチの解析結果を見ながら、書き込んでいきます。
注意する点として、PITに書き込んだ通りにピッチが動くのではない点です。
実際のピッチの動きは、メニューにある「ピッチレンダリング」をクリックし、
赤い線を表示させて、ピッチの動きを確認してください。
まとめ: 歌手のクセと調整方法を知ろう
何人かピッチを模写しているうちに、法則性があることに気づくと思います。
・しゃくりのタイミングが早い人と、遅い人がいる
・低い音から高い音へ移る時に、ピッチの外れ具合が人によって違う
・音の開始時に、下からせり上がる人と、せり上がらない人がいる
・何もないノートの途中で、ピッチが上下する人がいる
など。
また、ピッチを書き込んだ状態でVOCALOIDに歌ってみてもらうことで
・どういう調整をすれば、どういう風に歌ってくれるか
・初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカごとにどういう歌い方がしっくりくるか
が分かるようになります。
ものすごく手間のかかる作業ですが、
もし興味がありましたら、チャレンジしてみてください!
VOCALOIDに自分の理想の歌い方をしてもらえるようになると
よりVOCALOIDの歌モノ作りが楽しくなると思います。
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